「採用担当者の工数は増やしたくないけど、優秀な新卒人材は確保したい...」このジレンマに悩む採用担当者が増えています。新卒採用市場では、経団連の「就活ルール」廃止以降、採用活動の早期化が進み、優秀な学生ほど早期に内定を獲得する傾向が顕著になっています。こうした環境で注目を集めているのが「ダイレクトリクルーティング」。従来の「待ち」の採用から、企業が主体的に学生にアプローチする「攻め」の採用手法です。しかし、多くのサービスが乱立する中、自社に最適なものを選ぶのは容易ではありません。本記事では、ダイレクトリクルーティングの基本から、最新手法まで、採用担当者が真に求める情報を徹底解説。具体的な比較データを交えながら、採用成功への道筋を示します。新卒採用におけるダイレクトリクルーティングとは?基礎知識と最新トレンドダイレクトリクルーティングの定義と仕組みダイレクトリクルーティングとは、企業が求職者データベースから候補者を選定し、DMやメールを通じて直接アプローチする「攻め」の採用手法です。新卒採用では、学生のプロフィールデータをもとに、企業が求める人材に対して直接スカウトメールを送り、接点を作ります。基本的な流れは次の通りです。就活生向けプラットフォームに企業アカウントを作成登録学生のデータベースから候補者を検索・選定選定した学生に対してスカウト(オファー)を送信学生からの返信・承諾があれば面談を設定選考プロセスへと進める従来の採用手法との違いと優位性従来の採用手法(ナビサイトや合同説明会など)が「学生からの応募を待つ」スタイルであるのに対し、ダイレクトリクルーティングは「企業から直接アプローチする」点が大きな違いです。この違いがもたらす優位性は以下の通りです。ターゲットを絞ったアプローチ:自社に合った人材だけに絞ってアプローチできる学生との早期接点創出:就活本格化前に優秀な学生と接点を持てる母集団の質向上:応募者の「質」を高められる潜在層へのアプローチ:積極的に就活していない学生にもリーチできる2025年の新卒採用市場で見られる3つのトレンド2025年の新卒採用市場では、以下の3つのトレンドが顕著になっています。超早期化大手企業を中心に、大学3年生の夏頃から実質的な採用活動がスタート。オンライン採用の定着コロナ禍をきっかけに広がったオンライン面接や説明会が標準化。採用のデジタル化が加速し、対面とオンラインを組み合わせた「ハイブリッド採用」が主流になっています。AI活用の拡大採用プロセスの各段階でAI技術の活用が進行中。特にスカウト業務の自動化・効率化の動きが加速し、候補者の選定からスカウト文面の作成まで、AIの支援範囲が拡大しています。新卒採用のダイレクトリクルーティングが注目される4つの理由採用活動の早期化と「待ち」の限界就活の早期化に伴い、優秀な学生は就活サイトへの登録前に既に内定を獲得しているケースが増加。「求人掲載して応募を待つ」という従来の方法では、優秀な学生の多くが他社に流れてしまうという課題が生じています。このような状況下で、企業側から積極的にアプローチできるダイレクトリクルーティングは必須の採用手段となっています。採用コスト最適化への期待新卒採用における費用対効果の最大化を目指す企業が増える中、ダイレクトリクルーティングはコスト最適化の有力な選択肢です。一般的な新卒採用ナビサイトでは、掲載料として数百万円の固定費が発生し、採用の成否にかかわらず費用が生じます。一方、ダイレクトリクルーティングサービスの多くは、定額制または採用成功報酬型の料金体系です。新卒1人あたりの採用単価を30〜40万円程度に抑えられるケースも多いです。求める人材へのピンポイントアプローチが可能「母集団形成」という言葉に縛られ、とにかく多くの応募者を集めることに注力してきた従来の新卒採用。しかし、応募者が多すぎると選考工数が増大し、ミスマッチも発生しやすくなります。ダイレクトリクルーティングでは、学部や研究内容、スキル、インターン経験など様々な条件で学生を絞り込み、自社に合った人材だけにアプローチできます。「AIに興味がある理系学生」「英語力の高い文系学生」など、具体的な条件での絞り込みが可能です。オンライン採用時代の新たな学生との接点創出コロナ禍以降、対面型イベントが減少し、学生との接点づくりに苦戦する企業が増加。ダイレクトリクルーティングは、オンライン中心の採用環境においても、効果的に学生との接点を創出する手段として機能します。特に地方企業や知名度の低い企業にとって、物理的な制約を超えて全国の優秀な学生にアプローチできる点は大きな魅力です。リモートワークの普及により、採用地域の制約も少なくなった現在、ダイレクトリクルーティングの可能性はさらに広がっています。ダイレクトリクルーティングサービス導入のメリット・デメリット導入により得られる5つのメリット1.採用コストの削減成功報酬型では採用成功時のみ費用が発生するため、無駄なコストを抑制できます。定額制の場合も、採用人数を増やすほど1人あたりの採用単価が下がります。2.採用ターゲットの絞り込み「理系の研究内容」「インターン経験」「語学力」「特定の資格」など、細かな条件での検索が可能。これにより選考の効率が高まり、結果として採用の質も向上します。3.潜在層へのアプローチ積極的に就職活動をしていない「潜在層」にアプローチできるのが強みです。特に意欲や能力が高いにもかかわらず就活に消極的な学生が少なくない現状では、大きなアドバンテージとなります。4.早期接点による自社理解の促進早い段階から継続的に学生とコミュニケーションを取ることで、自社への理解を深めてもらえます。これにより内定後の辞退率低下や入社後のミスマッチ防止につながります。5.採用スキルの向上スカウト文面の作成や学生とのコミュニケーションを通じて、自社の魅力を伝える力が磨かれます。この経験は他の採用活動にも活かせる貴重なノウハウとなります。認識しておくべき3つのデメリットと解決策1.担当者の負担増加候補者選定、スカウト文面作成、返信対応など、担当者の工数増加は避けられません。特に返信率を高めるには、一人ひとりに合わせたカスタマイズが必要です。解決策 AIが搭載されたサービスや運用代行サービスを利用することで、この負担を大幅に軽減できます。例えばScout Baseでは、AIが候補者のリストアップから文面作成まで自動化し、工数を約70%削減できます。2.効果が出るまで時間がかかる すぐに成果に結びつかず、継続的な運用とPDCAの繰り返しが必要です。短期的な成果を期待して始めると、途中で挫折するリスクがあります。解決策 最低3ヶ月〜半年程度の運用を前提とし、返信率や面談設定数などの中間指標を設定して進捗を確認しましょう。3.サービスによって登録者層が異なるサービスごとに登録している学生の属性(大学、学部、地域など)が異なるため、自社のターゲットと合致しないケースがあります。解決策 複数のサービスを比較検討し、デモアカウントなどで実際の登録者を確認した上で選定することをおすすめします。導入すべき企業の特徴と時期ダイレクトリクルーティングが特に効果的な企業の特徴を紹介します。採用ターゲットが明確な企業:「〇〇大学の△△学部」「〇〇の研究をしている」など、具体的な人材像がある知名度が低い企業:学生からの自然な応募が集まりにくい特定のスキル・資質を求める企業:語学力やプログラミングスキルなど、具体的な能力を持つ人材を求める採用数が限られている企業:少数精鋭で採用したい導入の最適な時期は、大学3年生(または修士1年生)の夏〜秋頃。この時期からアプローチを始めることで、他社より早く学生との関係構築を進められます。ダイレクトスカウトを利用してみたいが、運用が心配という場合は、Scout Baseにご相談ください!【2025年版】新卒採用向けダイレクトリクルーティングサービス比較サービスタイプ別分類と選定ポイント新卒向けダイレクトリクルーティングサービスは、主に以下の2タイプに分類できます。1.総合型幅広い大学・学部の学生が登録例:OfferBox、dodaキャンパス、OpenWorkリクルーティングなど 選定ポイント母集団の網羅性を重視する場合に最適2.特化型特定の属性に特化例:LabBase(理系学生)、TECH OFFER(IT人材)、ViViViT(デザイナー)など選定ポイント特定のスキルや専門性を持つ学生を求める場合に有効タイプ別新卒スカウトサービス比較表1.総合型サービス比較表サービス名登録学生数(目安)主な特徴料金体系OfferBox約24.6万人(2024年3月時点)適性検査「eF-1G」によるマッチング精度向上。導入企業数18,262社(2024年6月時点)定額型:3名75万円~、成功報酬型:38万円/人dodaキャンパス約99万人(2023年5月時点)ベネッセとパーソルが提供。低学年へのアプローチも可能定額型:3名60万円~、成功報酬型:35万円/人キミスカ約83.4万人(2023年2月時点)3種類のスカウト機能。導入企業3,000社以上採用計画に合わせたプランを提案iroots累計17万人以上(2011年~)企業完全審査制。詳細なプロフィール登録が可能シーズンやニーズ毎に提案プランを用意CheerCareer年間約10万人(22卒学生)ベンチャー志向の学生が多く登録ライトプラン:月3万円×12か月(36万円)FutureFinder約4万人(理系学生も登録者の1/4)AIと心理統計学で活躍人財を分析、スカウト運用も代行成果報酬型プラン、定額掲載プランJOBRASS新卒約8万人3種類のオファー定額制ONE CAREER CLOUD32万人学生利用率が高く、幅広い学生にアプローチ可能定額プラン、成果報酬プランMatcher Scout非公開事務作業を代行してくれるので工数負担が減る成功報酬型2.特化型サービス比較表サービス名特化領域登録学生数(目安)主な特徴料金体系(例)LabBase理系学生約2万人(22卒学生)全国6,196カ所の研究室を網羅。高学歴の学生登録が多い自社完結プラン(定額制):120万円/年~サポーターズエンジニア志望非公開実務経験ありの新卒エンジニアが多数利用。勉強会やイベントを積極的に運営定額制プラン:160万円~/2年ViViViT(ビビビット)クリエイティブ系非公開美術系学校の卒業生の約20%が利用。ポートフォリオを確認して学生を探せる非公開シンアド就活広告・インターネット業界志望約2万人広告・インターネット業界への志望度が高い学生にアプローチ可能非公開地方のミカタ地方学生約1.2万人東京で就職を目指す地方就活生にアプローチできる1名採用するのに30万円~paiza新卒エンジニア志望約10万人(23卒以降・2022年4月)ITエンジニア志望の学生特化。プログラミングスキルを確認しながら採用活動が可能成果報酬型Career Selectエンジニア志望非公開Web・ゲーム・ソフトウェア業界に特化。登録学生の約9割はプログラミング経験あり非公開ReDesigner for Studentデザイナー志望約1.1万人全国の美芸大生・総合大生・専門学生などデザイナー志望非公開Global Career.comグローバル人材非公開登録者の40%は早慶上智、GMARCH、関関同立など国内上位校定額プラン、初期費用+成功報酬プランおすすめ新卒ダイレクトリクルーティングサービスOfferBox約24万人(2024年卒)、MARCH・関関同立以上が30%以上dodaキャンパス約113万人(25〜28卒)、大学1年生からアプローチ可能キミスカ約83万人、適性検査結果で学生を検索可能LabBase理系学生特化、東大・京大・旧帝大が28.9%サポーターズエンジニア志望学生に特化、実務経験ありの新卒エンジニアが多数利用paiza新卒ITエンジニア志望の学生特化。プログラミングスキルを確認しながら採用活動が可能ダイレクトリクルーティングを成功させる5つの実践ポイント1.明確な採用ターゲットの設定方法ダイレクトリクルーティングを成功させる第一歩は、採用ターゲットを明確に定義することです。Step1:自社で活躍している人材の共通点を分析現在活躍している社員の特性(出身大学、学部、経験、価値観など)を洗い出す可能であれば適性検査などの客観的データも活用Step2:具体的な検索条件に落とし込む「○○大学の△△学部」「□□の研究をしている」など、具体的な条件に変換広すぎず狭すぎない、適切な範囲を設定Step3:ペルソナを設定する「誰に」「何を」伝えるかを明確にするため、架空の理想的な候補者像を作成例:AI研究に取り組む理系学生で、ものづくりに興味があり、チームでの協働を好む人物具体的なターゲット設定により、スカウトの効率と効果が大幅に向上します。2.効果的なスカウト文面の作成術返信率を高めるスカウト文面のポイントを知りたい方はこちらの記事をご覧ください。3.送信後のフォロー体制の構築スカウトを送って終わりではなく、その後のフォローが重要です。返信への迅速な対応返信があった場合は24時間以内に返答返信率の高い平日の夕方〜夜にチェックする習慣づけを段階的なアプローチいきなり選考ではなく「カジュアル面談」からスタート学生の興味・関心に合わせて情報提供を段階的に行う定期的なフォローメール返信がない場合でも、1週間後に「リマインドメール」イベント情報など、価値ある情報と合わせて送ると効果的接点記録の管理学生とのやり取りを一元管理し、チーム内で共有どの段階にあるかを可視化して、適切なフォローを実施4.他の採用チャネルとの効果的な併用法ダイレクトリクルーティングは単独ではなく、他の採用チャネルと組み合わせることで効果を最大化できます。インターンシップとの連携ダイレクトリクルーティングでインターン参加者を集めるインターン参加者をその後の選考にスムーズに誘導ナビサイトとの役割分担ナビサイト:広く認知を広げるダイレクトリクルーティング:ターゲット学生に直接アプローチSNSマーケティングとの連携企業のSNSコンテンツをスカウトメールで紹介スカウトした学生に自社SNSをフォローしてもらい継続的に情報提供オンライン説明会との組み合わせスカウトした学生を少人数のオンライン説明会に招待一般公開されない特別感のある内容にすると参加率が向上5.ROI最大化のための運用最適化効果とコストのバランスを最適化するポイントを4つ紹介します。データ分析に基づく改善返信率、面談設定率、内定率などの指標を定期的に分析効果の高い文面パターンや送信タイミングを特定して横展開A/Bテストの実施文面のパターンを複数用意し、効果を比較送信時間や曜日による効果の違いも検証リターゲティング戦略一度返信がなかった学生に対しても、タイミングを変えて再アプローチイベント情報など新しい価値を提供する形で再接触コスト管理の徹底サービスごとの採用単価を計算し、効率の良いサービスに予算を集中成功報酬型と定額型の適切な組み合わせを検討自社に最適なダイレクトリクルーティングサービスの選び方サービス選定の7つのチェックポイント1.登録学生の量と質登録学生数とその属性(大学、学部など)自社のターゲット層がどの程度登録しているか2.検索機能の充実度どのような条件で検索できるか研究内容や特定スキルなど詳細条件でも検索可能か3.AI・自動化機能候補者リストアップやスカウト文面生成の自動化レベルデータ分析・レポート機能の有無4.返信率・開封率の実績公表されている数値や口コミ評価業界や職種別の実績データの有無5.サポート体制運用サポートやコンサルティングの有無担当者の専門性と対応の質6.料金体系の最適さ自社の採用目標に合った料金プラン追加費用の有無や条件7.他ツールとの連携採用管理システムなど他ツールとの連携可能性データのエクスポート機能などまとめ採用活動の早期化が進む現在、優秀な新卒人材を確保するためには、待ちの姿勢ではなく、戦略的に動くことが求められます。ダイレクトリクルーティングはその有効な手段の一つですが、重要なのは数ある手法やサービスの中から、自社にとって最適なものを見極め、無理なく運用できる体制を整えることです。本記事が、採用工数を抑えつつ成果を最大化するための一助となれば幸いです。